FC2ブログ

多読の罠に嵌まった話

(2018-11-27)
今から40年前、
私が手探りで英語[に]取り組み始めた頃、
一生抜け出せない罠に陥るきっかけとなった1冊の本と、
その周辺の事柄について、
覚えていることを書いて見ます。

当時はインターネットも無いに等しい状況だし、
英語や出版をめぐる状況も今とは違います。
なので私の体験談も、
決して私がしたのと同じことを奨める意図で書いているわけではありません。




その本は、
洋販ラダー・エディションというシリーズの中の1冊でした。

当時の私は、
松本亨が奨めていた訳さない大量読書を実行するために、
英語の本を探していました。
『絵で見る英語』 の I から III から始まり、
そして Charlie Brown Dictionary に続いて、
手を出したのが
洋販ラダーでした。

洋販 (Yohan, Inc.) というのは、
日本洋書販売株式会社の略称です。
西洋で出版された洋書を日本で卸売する会社で、
その出版部門か子会社か正確には覚えていませんが、
洋販出版という名前で、
輸入書籍とほぼ同じ内容の本を日本で英語のまま出版していました。

この洋販から発売されていたシリーズの一つがラダー・エディション (Ladder Edition) です。
今風に言えばグレイディド・リーダーズに相当します。
米国で行なわれた英単語の調査結果をもとに、
使用頻度の高い順に1千語ずつ分類し、
最も頻繁に使われる1千語の語彙で書かれた本、
次点の1千語を加えた2千語で書かれた本、
更にその次の1千語を加えた3千語で書かれた本
という具合に、
語彙の水準で段階別に分類表示された本のシリーズです。

それぞれの単語の水準を示した英和辞典と英英辞典も出版されており、
東京にある書店で購入できました。
英和の方は洋販から発売されていました。
ですから、
この辞書で最初の1千語を前もって確認しておけば、
辞書を引かずに1千語水準のラダー本を読み始めることができる筈です。
どういう本を利用して英語を大量に読めば良いのか、
当時は専門家による手引きも皆無でしたが、
このシリーズなら単語の心配も無いので私でも始めることができたのです。
1978年の夏でした。

それぞれの本には、
1千語の範囲から外れる単語もいくつか出て来ますが、
そういう単語は太字になっており、
1千語の語彙による注が巻末に付いています。

最初は The Adventures of Tom Sawyer (Mark Twain) です。
省略されていない翻訳書を小学生の時に読んだので、
内容を覚えており、
抵抗なく読めました。
全く苦痛は感じなかったし、
まあまあ面白い体験でしたが、
ワクワクするほどではありませんでした。

次は O. Henry's American Scenes という短編集です。
一話一話は一気に読めるし、
プロットも単純なので、
これも抵抗なく読めましたが、
あっさりとした印象でした。

とりあえず辞書なしで読める英語の本であることが判ったので、
このシリーズの1千語水準を片っ端から読んで行きました。

それに飽きてくると、
もっと刺激的な洋書を探してきて辞書を片手に読み、
それに疲れたらラダーに戻るという読書を何ヶ月か続けました。
(繰り返しますが、
決してそういう方法を[奨]めているわけではありません。)

当時のラダー・エディションは、
もともと米国で出版されたシリーズを日本でそのまま復刻したもので、
本の中は全て英語
日本語の文字は皆無で、
表紙のデザインも米国のペーパーバックの様でした。

そういう中で手に取った1冊が、
私を罠に陥れたのです。
同じ年の秋か冬でした。

買って読んだ本なので、
その後も自分の書棚に暫く置いていたのですが、
私が大学生になり、
学部の3年か4年の頃に、
同じ学科の私より若い学生に、
何冊かのラダー・エディションと一緒に譲りました。

その後もラダー・エディション自体は続けて出版され、
統一感のある新装版に変わり、
新しい本も加わりましたが、
私を陥れた1冊は2度と目にすることが無いまま、
現在に至っています。
本の題名と著者名は今でも覚えているので、
どこかに1冊でも無いものかと思い、
いくつかのネット古書店で検索しました。
その本の原書は出てくるのですが、
ラダー版は出てきません。

私には珍しく、
翻訳書も探してみましたが、
未発見のままです。
何らかの事情で日本語版は出なかったらしいと判断しました。

ただし、
日本の国立国会図書館には、
洋販のラダー版が所蔵されているらしいです。
100頁ぐらいの中編で、
フィクションなのかノンフィクションなのか、
定かではありません。
時代はおそらく1950年代か60年代で、
物語の舞台は、
東ヨーロッパのある国です。
共産党の独裁政権が統制を強めてきており、
その国の人々は思想的に不自由な生活を強いられる様になりましたが、
同時に国境での監視も強まり、
国外への亡命もほぼ不可能になりつつありました。

そういう中で、
国境近くの町に住む
確かコンヴァリンカ (Konvalinka) という名の人物が、
国外脱出の糸口を発見します。
それは鉄道の線路です。
国境の閉鎖と監視の強化に伴い、
国境を越える列車も運行されなくなりましたが、
線路はそのままなのです。
もちろん監視は厳しいので線路を歩いて脱出することはできません。
でも汽車の運転士がその気になれば. . . .

一人では実行に移せない計画なので、
コンヴァリンカは秘密裏に協力者を見つけ、
集団脱走に向けて準備を進めて行きます。

私がこの本を読み始めた時には、
とにかく先の展開が気になり、
やめられなくなり、
その日のうちに最後まで行ってしまいました。

常識的に考えれば、
英語の本を読みなれない人に、
登場人物の多い物語はお薦めできません。
この本も登場人物は多いのですが、
その時の私には全く気になりませんでした。
努力して読まなければという気持ちより、
とにかく読みたいという気持ちが勝ったのです。

もちろん、
私以外の人が同じ本を読んでも、
私と同じ様に引き込まれるかどうかは、
保証できません。
当時の私にはピッタリの難易度とプロットの強さだったわけですが、
まだまだ難しくて面白く読めないという人もいるでしょうし、
逆に物足りないと感じる人もいるでしょう。

私が罠にかかったその本の
著者は Martin Fiala で、
書名9:15 to Freedom です。

表紙の色はブルーで、
蒸気機関車が描かれていました。

最近、
洋販ラダー版の原本になった米国ラダー版のペーパーバックで、
この 9:15 to Freedom を所蔵している私立の図書館が日本に存在することを、
私は知りました。
何と表紙の画像まで公開しています。
小鷹信光文庫/ヴィンテージペイパーバックスです。
詳しくはリンク先をご覧ください。
リンク先の画像で、
右上にラダー・エディションのロゴが確認できます。

ともあれ、
難しすぎず、
適度に長くて読者を引き込むプロットのある本を
英語で一気に読む体験をして、
その後40年も抜け出せない
多読の罠にかかってしまいました。



スポンサーサイト

tag : 多読 英語 語彙



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Ryotasan

Author:Ryotasan
今は英語関係の仕事をしていますが、高校時代、英語の成績はクラスで最低でした。英語の多読は1978年からしています。海外経験は短期間の旅行を何度かしただけです。留学したことは無いです。ずっと日本で英語をやってきました。最近、フランス語の多読もしています。

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる